本格的な帆船模型は木材製で高価・大型だが、この製品はプラスチック製で小型。
キットはロシア製でなかなか良い出来である。ただし、スケールが小さいのでどうしてもプラの厚みが気になる。ここをどうするかがポイントである。
また、帆船の仕組みがわからないと製作しづらいので、各部名称や機能もわかる限り解説した。
専門用語がバンバン出てくるので心して読むように!
1.使用キット紹介
1.1.内容物
ZVEZDA製、GOLDEN HIND 1/350。
ズベズダはロシアのメーカ。
ガレオン船は戦闘に特化した帆船。
ゴールデンハインドはイングランドの私掠船。 私掠船は国家公認の海賊船。船長はフランシス・ドレーク。
ランナー
Revell社あたりのOEMかと思ったけど、ズベズダのオリジナルっぽい。
デカール
説明書
ロシア語と英語のハイブリッド。
1.2.気になる点
プラの厚み
各部のプラの厚みが気になる。
ロープや帆などもプラで表現するのは無理があるだろう。
サイズが大きいキットなら気にならないだろうが、サイズが小さいのでプラの厚みが大きく響く。
オーバースケールである。
ゲート跡
・目立つ部分にゲート跡がくる。もっと隠れる場所にゲートを配置できなかったのか?
(アンダーゲートは使われていない)
・ゲート処理しづらい箇所にゲートがある。
スナップフィット
接着剤不要のスナップフィット(穴に差し込んで組み立てる)である。
しかしそのため穴がきつくなっていて入らないことが多い。
接着剤を使う人は、穴を広げて接着剤で固定した方が良さそう。
パーツの合い
パーツ同士のフイット感は良好。
一部、ピッタリ来ない箇所があった。接着剤で強引に固めることはできた。
2.製作コンセプト
イメージ
箱絵を見ると、派手な模様が施されている。これらはデカールで再現できる。
この派手な模様が好みではないので、模様の無いノーマルなガレオン船で作る。
製作ポイント
帆の厚みとロープの太さは目立つところなので、ここをどうするかが見栄えに影響するだろう。
木材部分の厚みは、薄くするのは大変でインパクトもあまり多くないので、このままでもいいだろう。
各部名称
帆船の各部名称や機能。
これは記事の後半に盛り込みました。
3.5.リギングあたりから見てください。
3.製作
3.1.船体部分の製作
船体後部甲板
2つのパーツを組み合わせて作る。
ここは、日本のメーカーならスライド金型を使ってワンパーツで作ってしまうだろう。
船体裏側の押しピン跡
赤丸を付けた部分は見えるので、削っておいた方が良い。
船体前部の合わせ目消し
合わせ目にパテなどを入れて埋める。
船嘴(せんし)(右の三角の部分)は奥で削るのが大変なので、三角に切ったプラ板を貼り付ける。
船体後部がピッタリこない
船体後部がピッタリ合わないが、接着剤で強引に付けた。
船体の塗装
木材の色ってどんな色?サイズが小さいので木目など描けない。
1色で再現するのは無理と考え、幾つかの色を重ねてムラを出すように塗装した。
はしご
キットだとプラの厚みが気になる。
0.5mmのプラ角棒で自作したが太い。
0.5mmのプラ角棒と0.3mmのプラ板を切って自作Ver2を作った。これ以上小さく作るのは無理。
ちょっと曲がっているけど、この小ささではこれ以上の精度は至難の業。
ステップが少し曲がっているが、オリジナルの太さに比べたらそれらしいだろう。
脱出用ボート
脱出用ボートは、組み合わせ用のダボ穴が見えるので気になる。
削ってパテで埋めた。
船尾
プラの厚みが気になる。木材はこんなにぶ厚くないだろう。
パテで埋めて合わせ目を消した。
するとモールドが消えたので、カッターで掘り起こした。
船尾楼
オリジナルはプラの厚みが気になる。
しかも船体左右を貼り合わせてしまうと後から取り付けられないのだ。
0.75mmプラ角棒と0.5mmプラ板で自作した。
しかし最初に作ったver1は大きすぎたので、0.5mmプラ板と0.3mmプラ板で一回り小さいものを作った。
船体底部
白で塗ってから、ブラウン(エナメル)を塗る。拭き取る。
スミ入れしたかったのだが、ウェザリングになった。
モールドが浅いので仕方ない。かといってこの小ささでモールド掘り起こすのは大変である。
まあいいか。
3.2.船上部分の製作
船尾楼ランタン
この部品は、真後ろのモールドのど真ん中にゲート跡がくる。
ゲート位置をモールドの無い下か上かにして欲しかったな。
ランタンのボディはブラス(真鍮)色、中はつや消しブラックで塗装。
ブラスはゴールドより黄色っぽい色。
大砲
後部甲板の奥にも大砲を入れなければならないので注意。完全に接着すると剥がすのが大変である。
大砲は黒鉄色で塗装した。
斜檣(バウスプリット)
船首の斜檣(しゃしょう)。バウスプリットとも言う。ここは斜めに取り付けるので良いのか?
真ん中ではなく若干ずれた位置に取り付けるようになっている。
マスト
マストも少々ゲート処理しにくい。またパーティングラインがあるのでカッターなどで削っておく。
ヤード(帆を張る横棒)は黒鉄色で塗装。
乗組員
甲板上が寂しいので、船員を乗せることにした。
フジミ製、旧日本海軍艦艇乗組員②を使用。1/350スケールである。
一般船員
左の船員は大砲要員、右の船員は敵艦を監視する要員。
シャツの色がベージュ色だが、元々は白で汚れて汚くなったからを想定(爆)。
船長と提督
船長は黒で塗装した。シャツはグレー。
提督は船長と同じ形だが、パテを適当に盛り付け上着を羽織っている感じにした。
塗装は赤とゴールドでゴージャスな感じにしてみた。
3.3.台座の製作
台座は組み立てて塗装しました。
黒で塗装 ブラスで塗装
下地を一旦、つや有黒で塗装したあと、ブラス(真鍮)色で塗装しました。ネームプレートはシルバーです。
3.4.スル(帆)
スルとは帆のことである。英語だとセイル(sail)だが、手慣れたベテランは「スル」と呼ぶらしい。
なのでスルと呼ぶ。
キットのスルはプラスチックなので厚ぼったい。かっこ悪い。
紙や布で作るか?とか考えたが、リアルかもしれないが強度が保てないと思った。
なので、フチを削って薄く見えるようにした。削ったのはフチだけなので真ん中はぶ厚いままだが、薄すそうに見えるので問題ない。
下に影になる部分に茶の線を引いておいて、クリーム色寄りの白(クレオスC311)で塗装した。
スナップフィットなので、スル(帆)はヤード(帆を吊るす横棒)にはめ込む方式である。
すわて。帆を先に取り付けてよいのか、ロープ張りをやってからの方が楽なのか?
一般的な帆船模型(木製など)では、ロープ張り(リギングと言う)をしてからスル(帆)をつけるっぽい。この模型ははめ込み式なので、ロープ(リギング)の後に、帆を付けると、ロープ(実際には紐だが)を切ってしまう可能性がある。
一部、リギングをしてスル取り付け、再びリギングを行った。
3.5.リギング(ロープ張り)
帆船模型は初めて作ったが、実はここからが本番と言っていい。
帆船の写真を見ると、ロープ類がクモの巣のように張り巡らされている。
これらは一体何なのか?どういう機能があって何がどこにつながっているのか?
写真見ても複雑すぎて理解不能。
色々調べて多少はわかったが、それでもまだわからないことが多すぎる。ヨットなどが趣味の人はたぶん詳しいのだろうけど。
それでもマスト(支柱)周りは大体(完全にではない。大体だぞ?)構造がわかったので説明する。
専門用語がバンバン出てくるので、名称(用語)を理解しないとここから話についてこれなくなるぞ。
マスト周りのリギングについて
マストについて
まず、マスト周りについてはこんな配置、名称である。
今作っている模型に関しては、マストが縦に3本しかないから、ミズンマストが無いことになる。
ただ、一番後ろのジガーマストをミズンマストと呼んでも良いようである。
実際にはマストは、後ろのマストほど若干(数度?)後ろ側に傾いているらしい。
(帆が風を受けた時、前に倒れないようにするためか?)
バウスプリットは、英語はbowspritだから、バウ・スプリットだろう。
弓(ボウ)の形をした支柱(スプリット)ってことだろう。
ヤードはスル(帆)を吊るす横棒である。
檣楼(しょうろう)は、見張り台である。
で、次は、マスト周りのリギングである。
ステイについて
マストが強風やロープで引っ張られて、強い力がかかって倒れたりしたら大変である。
なので、マストが倒れないようにするロープがステイである。
前にあれば、フォアステイ、後ろにあればバックステイ、横にあればサイドステイである。
図では、サイドステイが無いので、左右に倒れないようにバックステイが後ろ左右に一本ずつある。
上から見ると三角になっている。
しかし、サイドステイは次に説明するシュラウドと兼用されるので無いこともある。
バックステイが無い帆船もあるかもしれない。この辺はよくわからなかった。
で、次は、シュラウドとラットラインの説明である。
シュラウド、ラットラインについて
船員が檣楼(しょうろう)に登るためのロープがシュラウド、ラットラインである。
赤の縦ロープだけをシュラウド、青の横ロープだけをラットラインと言うという説と、
青の横ロープはラットラインだが、全部ひっくるめてシュラウドと言う説もあったので、どっちかよくわからない。
まあ、縦ロープシュラウド、横ロープをラットラインと言うとしておくことにする。
ラットラインは船員が足を引っかけるロープで、シュラウドよりは細いロープである。
模型のステイとシュラウド・ラットライン取り付け
やっと模型の話に戻ってきた(笑)。
キット添付のシュラウド・ラットラインはプラで、ぶっといので、使う気になれない。
俺はキットので我慢するという人はもちろんそれでもいいのだが。
しかし自作するにしても、網の目になっているので、紐で網の目を作るのはめんどくさい。
三角の形をしているので、格子状の網を買ってきて切り取って使うと思ってもダメである。
秘密兵器を使うことにした。
じゃーん。戦艦用ラットライン。エッチングパーツ(金属製)である。
1/700なのでちょっと目が細かすぎる感じはある。1/350は売ってないので仕方ない。
金属なので、プライマーを塗ってから黒で塗装した。
下の切り取って流用したパーツはロープの滑車である。シュラウドと滑車の位置がずれているが、まあ仕方あるまい。
で、シュラウド・ラットライン(サイドステイ兼用)を取り付けた。
シュラウドの上側の 檣楼(しょうろう)に入り込む部分を瞬間接着剤で付けたが、どうも浮いてきてしまうので、紐で縛った。
フォアステイだけ取り付ける。バックステイは省略。
フォアステイは、自分のひとつ前のマストの下に縛り付ける。
う~ん。スル(帆)の説明もしておかないと説明しにくいな。
スルが上下2段になっているが、上下それぞれのスルの上あたりから、2本ステイが出ていて、前のマストに接続されている。
フォアマストのステイは、バウスプリットに縛り付けてある。
メインマストのステイは、フォアマストに縛り付けてある。
ミズン(ジガー)マストのステイは、メインマスト下根元に縛り付けてある。
専門用語がバンバン出てきているが、ついて来れているだろうか?
スル(帆)について
スルについても名称を確認しておかねばなるまい。
縦に沢山並んでいるが、呼び方がはっきりしない。
最初の帆船は、少なくともメインスルだけはあったはずである。
※メインコーススルとは言わないらしい。
それから、メインスルの上にもう一つスルを追加して、一番上だからトップと名付けた。
ところがさらにその上にスルを追加したから、トップの上にトップギャラント、その上をロイヤル、さらにスカイ、さらにムーンとどんどん名前を追加していった、まあ多分そんなところだろう。
スルが多くなりすぎて、トップを分割し、アッパートップ、ロアトップで2つの名称にしているなどもある。
トプスルはトップスルを簡略化してトプスルである。
また、トップギャラントが訛って、トップゲルン、さらに訛ってトゲルン、トガンになったという説も聞く。
前に説明したステイにも三角帆をつけることがある。メインスルの前にある三角帆ならメインステイスル、フォアスルの前にある三角帆なら、フォアステイスルのような感じである。
通常のスルの名前の間にステイを入れればいいっぽい。
一番後ろのジガーが良くわからない。
スパンカー(ガフ)と言うのは、四角帆だけを言うのだろうか?三角帆に対してスパンカーと言ってもいいのだろうか?
ジガースルとかジガートプスルとかは言わないのだろうか?
あるいは、三角帆でもミズンスルとか言ってもいいのだろうか?
今回作っている模型の構成は、
スプリット、フォアトプスル、フォアスル、メイントプスル、メインスル、スパンカー?である。
スパンカーと言う呼び方が正しいのかどうかわからないので?をつけてある。
スル(帆)周りのリギングについて
あ~。また書いておくぞ?リギングとはロープ張りのことである。
帆船で沢山のロープがあるがそれである。
なんとか丸は300本のロープが使われているとかどこかに書いてあったな。
この模型でそんなにワイヤーを貼れないので、代表的なものだけにする。
帆やヤードに結んであるロープは、その先がどこへつながっているのか、がさっぱりわからない。
帆船写真などを見ても複雑すぎて目で辿ることができない。船の種類によっても接続先が違う可能性がある。
そこで考え方を変えることにした。
帆船に必要な機能は何か?それを実現するにはどうロープを張れば良いかである。
その理屈に従ってロープを張れば、ロープの接続先が本物と異なっていても、現実離れしたありえないリギングにはならない。
本物とは接続が違うけど、確かにこのようにロープを繋げは、帆船を動かすことはできますよね?という、理論上は正しいリギングとなる。
なので、帆船の構造、仕組み、理屈を理解することが大事!
まず、スル(帆)を操作するには何が必要か?を考えた。
最低、以下の機能が必要であると思われる。
・スルを広げる機能(風を受けるため)
・スルを畳む機能(風を受けたくないとき)
・スルの向きを変える機能(風を受ける角度を変えて進行方向を変えるため)
また、インターネットも調べながら、完全には分からない点もあるが、まとめたら大体こうなった。
ウォルが考えていなかったロープがある。
・リフト:スルをヤードに吊るすために必要である。
・ボーライン:スルを前に引っ張り膨らませ、風を受けやすくする。
他は、ウォルが考えた機能のロープ。
・シート、タック:下端を引っ張りスルを広げる。
・バント、リーチ、リーフ:スルを畳む。リーチの他にリーフと言うのもあるようだが、リーチとリーフの違いが判らない。
・ブレース:ヤードを動かしてスルの向きを変える。
箱絵と合わせるとこんな感じ。
箱絵だと、フォアトップスルのヤードから出ているブレース(青)が、メインマストのフォアステイに接続されている。ブレースは大抵、どこかのステイに接続されるらしい。
ほらほら?ここまでの用語をきちんと理解していない人は説明文がさっぱりわからないぞ!
意味わからん人は、前に戻って復習しろ!出直してこい。
ボーライン(水色)は自分の前のマストのステイに接続すればいいらしい。
リーチとバント、裏側はどうつながっているのかよくわからない。
シートもスルの下から生えているが、それがどこへ行っているかわからんのだよ。
また、絵ではタックが見当たらない。この帆船には無いのかもしれない。
スル周りのリギングの取り付け
ロープとして使用したものはこれである。
シリーズとしては比較的太めの方である。太めの髪の毛と言った感じだろうか?
色は黒だがメーカーによっては白もある。
ロープは何色なのかと思ったが、ある帆船模型のWebサイトで、固定するロープは黒で、動かすロープは茶と書いてあった。なので黒にしておく。
地獄のリギング編に突入である。
これはボーラインをリギングしている写真である。
ピンセット2本で縛る。
ワイヤーの弾力があって、きれいに縛れない。うにょっと曲げても、またびょーんとなって真っすぐに戻りやすい。形状記憶みたいだな。
もっと細いワイヤーにすべきだったのだろうか?
メタルワイヤーの方がよかったのだろうか?
美しくなくてもいいから、とりあえずこのまま突っ走ることにした。
ボーラインはステイに結び付けた。
これはブレースを取り付けようとしている写真である。
ヤードの端っこからロープが出ている。どこにつながるかわからんのだが、一般的にはステイにつながるらしい。フォアマストのブレースはメインマストのステイに。
ヤードを動かすためにはブレース2本が必要。フォアトプスルから出ているブレースはメインマストのメイントプスルのステイに接続する。左右のブレースを引っ張れば、ヤードの角度が変わりスルの角度も変わる。
実際にはこれをさらに甲板上から引っ張るロープが必要だろう。
同じく、下のコースのブレースも同様。フォアスルのヤードのブレースは、メインスルのステイに接続した。
ブレースは基本的に一つ後ろのステイに接続されるらしい。しかし一番後ろのブレースは前のマストのステイに接続されるっぽい。
でも今回、メインマストのブレースは後ろ甲板に接続した。
もしかすると現実の船は、メインマストのステイにブレースがつながっているかもしれない。
でも、これだと急角度になりブレースが操作しずらいので、ウォルの接続の方がヤードを操作しやすい。
ロープの接続先が現実と異なっているかもしれないが、ウォルの帆船はきちんと機能することを考えた構造にしてある。だから理屈的に全くウソではない。
箱絵だとスパンカーのブレースは上の写真のように見えるのでこう接続した。
完成しました。接着剤2個分くらいの大きさ。
ハデハデ模様は嫌いだったのでデカール貼りませんでした。
4.完成写真
リギングがビシッとしてなくてイマイチだが、はじめて作った帆船にしては上出来。
5.使用したもの
5.1.塗料
■船体:C41レッドブラウン、C43ウッドブラウン、C44タン(C)
■船底、帆:C311グレーFS36622(C)、XF-64レッドブラウン(T)
■ランタン、台座:124スターブライトブラス(G)
■大砲:C28黒鉄色(C)
▼スミ入れ:WC02グランドブラウン(C)
※(C)クレオス、(G)ガイアノーツ、(T)タミヤエナメル
5.2.キット
使用したキットです。
5.3.部材
使用した補助部材です。
↑ラットライン
↑リギング
↑船員 これ入手がもう難しいかもしれないです。
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