初心者向けにエアブラシの使い方のポイントをまとめておく。エアブラシの構造と機能、塗料の薄め方、エアブラシの動かし方などを解説する。ウォルの経験に基づいて書いているので、必ずしも最適解とは限らないが、初心者向けガイドになればと思う。
1.基本的な操作方法と名称
すでに知っているかもしれないが、基本事項をおさらいしておく。
1.1.エアブラシの動作原理
エアブラシの動作の仕組みは下図の通りである。
コンプレッサーが圧縮空気をハンドピースに送る。ハンドピースに塗料を入れ、空気と塗料を出すと、ミスト状になった塗料が勢いよく噴射され、部材が塗装される。
1.2.ハンドピースの各部名称と機能
ハンドピースの各部名称と機能は下図の通りである。
※メーカーによって呼び方が統一されていない。でも呼び方を決めておかないと説明しにくい。
ダブルアクションの例↓
知っておくべき事項↓
塗料カップ:塗料を入れる場所
ボタン:押すと空気が出る、引くと塗料が出る。押したまま引くと塗料が噴射される
エアバルブ:ここにホースを接続する
ニードルキャップ、ノズルキャップ:先端のニードルを保護するカバー
初心者はわからなくてもOK↓
ニードルストッパー:ボタンの最大引き量を少なく調整できる
空気調整ツマミ:噴射する空気量を少なく調整できる(高級機のみ)
2.塗装の準備
まず、塗装前の準備だ。
2.1.換気と養生
エアブラシ塗装では、塗料をミスト状にして噴射する。部屋の中に塗料のミストが充満すると健康に良くないので、換気を行い、マスクなどをする。
換気は、塗装ブースを使う、外(ベランダなど)で塗装する、などの対策を行う。
また、部屋の中の空中の塗料を追い出すために、扇風機やサーキュレーターを回すと良い。
また、汚れ防止のため、新聞紙を敷く、使い捨てのゴムやビニール手袋、エプロンなどもあると良い。
2.2.埃対策
戦車など汚すことを前提とした模型は、埃は気にならないが、車(カーモデル)などピカピカに仕上げる模型は、埃が付いていると目立つ。
従って、光沢塗装(ピカピカ塗装)の時は、埃は気を使った方が良い。具体的な対策は下記である。
(1) 各道具類に埃が付いていないか?
まず、道具に埃がついていることがあるので、塗装前に掃除すると良い。
チェック箇所
・ハンドピースの塗料カップの中、フタ
・塗料皿
・スポイトや攪拌棒
塗料びんやうすめ液ボトルの中に、すでに埃が入り込んでいることもある。フタを長時間、開けっ放しにしていたり、埃がついたままのスポイトや攪拌棒を、びん、ボトルに入れることで発生する。
埃のついた攪拌棒を入れない 埃のついたスポイトを入れない
埃が混じってしまったら、どうしようもない。
道具類は、使う前に一度、エアーを吹く、うすめ液を入れて捨てるなど、掃除しておく。
(2) パーツに埃が付いていないか?
パーツも埃が付着しているかもしれない。そのまま吹くと、埃の上から塗装してしまうかもしれない。
塗装直前に、ハケではらう、エアで吹くようにしておく。ハケは除電ブラシを使うとよい。
順番は除電ブラシ→ブロアーだ。
除電ブラシはらう ブロアーで吹く
除電ブラシは、部品に吸着して吹き飛ばせない埃をはらい、さらにブロアーで吹き飛ばす。
ハンドピースがダブルアクションの場合、空気だけ出せるので、エアブラシで吹き飛ばしても良い。
(3) それでも付くときは付く!
クリーンルームで塗装するわけではないから、埃は付くときは付く。付いたらあきらめる。しかも、圧縮空気は埃を吸いつけやすい?らしい。また水(ドレン)も出やすい。
埃が付いたら、初心者は難しいかもしれないが、中~上級者はすぐピンセットで取り除いたり、乾いた後、紙ヤスリで削り落としたりする。削り落とすと、下地が露出したり、凹凸が発生するのでリカバーが難しい。
下地が露出したら、また上から吹けばいいんじゃね?←それは正しいけどやってみたらわかるが、均一な塗装面にならずムラになりやすく、難しい。
埃を嫌って、裸で塗装するとか(本当か?)、塗料と同じ色の服を着て塗装する(なんだそれ?)、と言う人もいるらしい。
塗料と同じ色の服って?と思ったが、服の繊維が付着しても、塗料と同じ色だから目立たないというわけだ。
2.3.試し吹きをする
塗料を薄めて、試し吹きしよう。
(1) 塗料をかき混ぜる
塗料を取り出す前に良くかき混ぜる。かき混ぜるではない!良くだ、良く!
成分が分離して層になっていることがある。底に白い塗料が沈殿していることが多い。
気づかずに使うと、最初は色が濃かったのに、残りが少なくなる頃は色が白っぽくなるのだ。
ウォルは初心者のとき、これをやってしまった。同じビンから出した塗料なのに、最初に塗装したときと今とどうして色が違うんだろう?と。かき混ぜてはいたが、かき混ぜ方が足りなかったのだ!
(2) 薄める
原液のままでは濃いので、溶剤(うすめ液)で薄めて使う。塗料の種類に合った溶剤で薄める。なお、水性塗料は専用の溶剤の他、水が使える。
どのくらい薄めるべきかは、塗料の種類、現在の塗料の濃度、コンプレッサーの圧力、つや消しか、光沢か、光沢の最初の塗装なのか、仕上げ塗装なのか、細吹きしたいのか、ハンドピースを動かすスピードは速くかゆっくりか、遠くから吹くのか、近くから吹くのかにも関係してくる。
さっぱりわからないって?
最適な希釈はその場、その場で異なるということだ。
しかし、全くの初心者には、さっぱりわからないから、だいたいこんな感じ?と言う目安を示す。
よく言われるのが、ミルクのような粘度である。水のようだと薄すぎる。トロトロしていると濃すぎる。
塗料別だと大体次の表くらいに薄めるのが標準的である。
種類 | 塗料 vs 溶剤 | 備考 |
ラッカー系塗料 | 塗料1 : 溶剤2~4 | 水性に比べ、割といい加減な希釈でもそれなりに吹けるのでラク |
エナメル系塗料 | 塗料1 : 溶剤0.3~0.8 | やや濃い目に希釈。薄いと色が乗らない。 |
水性系塗料 | 塗料1 : 溶剤0.3~0.8 | やや濃い目に希釈。濃いので空気圧が高めでないと吹きづらい |
注意:この表は、全くわからない人向けに、大体このくらい?を数値で表したものだ。
量を測ったり、重さを測ったりしないで、自分の感覚で薄めて欲しい。
何度も経験しているうちに、自分のエアブラシ環境だと、大体このくらいの濃さがちょうどいい、と言う感覚が分かってくる。毎回スプーンなどで測っていると、この感覚がいつまでも身に付かない。
(3) 混ぜ方
通常は、塗料と溶剤を塗料皿に出して、攪拌棒で混ぜる。ミルクくらいの粘度になるように。
中~上級者には、ハンドピースの塗料カップに直接、溶剤と塗料を入れ、うがい(※1)で混ぜる人もいる。入れる順番は、溶剤→塗料の順。先に塗料を入れると詰まる可能性がある。希釈が濃いか薄いかは、うがいのときの泡がはじける様子を見て判断する。
※1:うがい
ハンドピースを清掃するときに使うワザ。ニードルキャップを指で押さえ、あるいは緩めた状態でエアブラシを吹き、先端から吹かずに逆流させるやり方。
詳しく知りたい人は5.エアブラシの清掃の仕方に記載した記事で紹介するので、そっちを見てほしい。
(4) 吹き方
シングルアクションの場合
(0)ホースでコンプレッサーとハンドピースを接続し、コンプレッサーの電源スイッチを入れる。
(1)ニードルアジャスターを閉めておく。(塗料を出さない)
(2)塗料カップに希釈した塗料を入れる。
(3)ニードルアジャスターを緩める。(塗料を出す)
(4)ボタンを真っすぐ下に押す。(空気を出す)
※ニードルアジャスターは、ダブルアクションの「引く」と同じ機能です。
ダブルアクションの場合
(0)ホースでコンプレッサーとハンドピースを接続し、コンプレッサーの電源スイッチを入れる。
(1)塗料カップに希釈した塗料を入れる。
(2)ボタンを真っすぐ下に押す。(空気を出す)
(3)ボタンを下に押したまま手前に引く。(塗料も出す)
(5) 試し吹きをする
イイ感じに薄めたら、試し吹きして確認する。試し吹きをするものは、不要パーツやランナーでも良いが、牛乳パックの裏などを利用するとお手軽だ。
濃い?薄い?のサンプルを作ってみた。使用した塗料は、Mr.カラーのルマングリーン(ラッカー系)。
濃い場合、つぶつぶが飛び散ったりする。ひどいときはハンドピースが詰まって吹けなくなる。
薄い場合、塗料が風圧で逃げたり(動いたり)、垂れてきたりする。
ただし、粒が飛ぶ、垂れるなどの現象も、対象物との距離、エア圧などで変わってくる。
何言っているかわからない?経験が足りんよ、君ぃ。
3.塗装の仕方
少し練習すれば、それなりに吹けるようになります。
(1) パーツとの距離
単純に、パーツ全体を全面ベタ塗りするとする。
パーツとハンドピースとの距離。しいて言えば、5~15cm離して吹く。
5~15cmってもっと正確に教えてくれよ!→教えようがない!!
これも各条件で異なるので正解は無い。場合によっては1cm位で吹いた方が良いときもあるし、20cmくらい離した方が良いときもあるだろう。
まあ初心者は、まずは10cmくらで吹いてください。慣れてきたら色々考えてください。
(2) ハンドピースの動かし方
ハンドピースを常に動かしながら吹く。場合によっては、パーツの方も動かして塗装する。
どのように動かすかについても同じく正解は無い。
くるくる回すように吹く人もいるが、(1)縦方向に動かすか、(2)横方向に動かすかが良いと思う。
縦方向に動かす 横方向に動かす
線を並べて行くように塗装する。
ポイントは、パーツの外から吹き始め、パーツの外でUターンさせ、パーツの外で吹き終わる。
成功例 失敗例
なぜかというと、吹き始め&終わりはスピードが遅くなるので色が濃くなる。実際やってみればすぐわかる。Uターンも2回重ねて吹くので色が濃くなってしまう。
縦に動かす理由
縦に動かしても、横に動かしてもいいが、ウォルの好みは縦だ。理由がある。縦は手首のスナップを効かることで、横にブレにくいからだ。腕ごと動かすと蛇行しやすい。
左右に振ると手首のスナップを効かせにくいので、縦に振っている。
パーツが大きいと上下に振っても、ハンドピースの角度が急になり、パーツとの距離が大きく変化するので、腕全体を動かすか、パーツの方を動かす必要がある。
(3) 何回か重ねて吹く
一度吹いただけでは色が乗らない(薄い)ことがあるので、その場合、何回か重ねて吹く。
特に、隠蔽力の低い塗料(白、黄、赤など)は、重ねる回数を多くしないと、発色しない。
吹くときに、薄く何度も少しずつ重ねて吹く方法と、一度にドバっと吹いてしまう方法とある。
初心者は、様子を見ながら何度も重ねて吹く方が良いと思うが、上級者はベタ塗りの場合は一気に吹く人が多い。しかし、迷彩塗装などは、上級者でも様子を見ながら少しずつ吹く場合が多い。
何言ってるかわからない?使い分けだよ、君ぃ。
4.エアブラシはつや消しになりやすい
エアブラシ塗装は筆塗りより、つや消しになりやすい。
光沢塗料を使ったからと言って必ず光沢になるとは限らない。
筆は液体を直接塗るので、表面張力で表面が滑らかになるので、光沢(ツヤツヤ)が出やすい。
エアブラシは、塗料が飛んでいくうちにある程度乾くので、粒々が付着し凹凸になりやすいので、つや消し(ザラザラ)になりやすい。
光沢にするには、希釈を薄くする、距離を近づける、リターダーの入ったうすめ液を使う、圧高めのコンプレッサーを使う、口径小さめのハンドピースを使う、などの工夫が必要である。
5.清掃の仕方
ハンドピースの清掃の仕方はこの記事を参照のこと。うがいの仕方も書いてある。
6.エアブラシ参考記事
初心者が初めてプラモデルの塗装するときに知っておくこと
エアブラシだけでなく、筆塗り、缶スプレー、各種塗料など、塗装に関する概要、考え方を説明している。
エアブラシ塗装に必要なもの<初心者向け>
エアブラシ塗装に必要な道具類を一通り紹介している。
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